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少年犯の「可塑性」

 

hinomarulaw.com

 

少年には「可塑性」があるという前提で、少年法が定められています。

可塑性というのは、再形成が可能であるというような意味です。

 

少年の可塑性について明確な根拠はありませんが、一般刑犯の再犯者率をみた時、大人より少年犯の方が再犯者率が低いことが数少ない裏づけになっています。

 

でも、凶悪犯罪の再犯者率は、大人39.7%であるのに対し、少年は52.4%です。

 

図II-30 刑法犯少年の再犯者数・再犯者率の推移(平成15~24年)

 

再犯者率は上がっています。

H15年罪名別 再犯率(暦年)

日本刑事政策研究会:刑事政策関係刊行物

再犯者率は、母数が少なかったり、初犯が減ると上がることもありますが、再犯率でみても28%です。

 

再犯のカウント方法は統計によって異なります。

国が発表している一般的な統計では、刑の加重がされる5年間の再犯をみますが、懲役刑以下の犯罪者は再犯としてカウントされないなど、条件があります。

 

第56条
懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。

懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者がその執行の免除を得た日又は減刑により懲役に減軽されてその執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときも、前項と同様とする。

併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなす。

 

再犯は時間が経つほど増えるので、実際の再犯率は統計より多いです。

 

静岡家庭裁判所委員会議事概要

数字みる再非行

更に、少年犯の場合は数年もすると成人になるため、カウントが複雑です。

裁判所統計が参考になりますが、その場合、少年犯の再犯率は4割です。

これは割合として多いです。

 

再非行率は?

昭和45年版 犯罪白書 - 刑の執行猶予 - DATA GO JP

「二極化しているのでは?」という意見もありますが、判断が難しいです。

 

 

昭和45年の少年人口(15-19歳)は916万人で、平成24年は605万人ですから、300万人ほど減っています。

執行猶予者も10%以上増えています。

昭和45年の少年再犯者は33,696人で、平成24年は22,179人です。

 

昭和45年の母数に換算すると、平成24年の再犯者数は3.1万人弱くらいに相当します。

2000人程度の差は横ばいとして捉えることもできるので、まだ二極化しているというほど特別な状態にないかもしれません。

  

第1-5-13図 刑法犯少年等の検挙・補導人員

 

刑法犯等を個別にみると、特別法犯少年と触法少年は高水準で推移しています。

 

特別法犯少年

特別法は、毒物・劇物、銃砲刀剣類所持、ドラッグ、一部軽犯罪などが含まれます。

触法は、14歳未満の違反者です。

 

少年の凶悪犯人口比は昭和40年16%、昭和60年18%、平成25年8%です。

激減しているように感じますが、これも検挙率などを考慮すると、平成25年は昭和の水準で14%相当になります。

 

  

「少年犯罪は減っている」という意見をよく聞きます。

検挙人員数が年々減っているのは確かなので、「減少傾向にある」という解釈も間違っていないと思います。

 

でも検挙人員数は、割合ではなく件数なので、「(生産)人口の多い時期は犯罪数が多い」という当たり前ことを表しているだけです。

また、低年齢化している流れを掴むには不向きです。

それでも、増えているということはありませんから、「減少傾向」という表現はできますが、「減っている(から厳罰化は不用)」といえるほどかというと、まだ分からないという感じではないかと思います。

 

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 (若年層の人口推移)

  

  

図II-29 刑法犯少年の検挙人員・人口比の推移(昭和24~平成24年)

 

過去にも性犯罪のデータをとりましたが、犯罪率には法則めいたものがあります。

1つは、何をしても常に人口の一定数(以上)が犯罪者になります。

もう1つは、人口数が多い時期は、その通常割合よりも犯罪が増えます。

 

団塊世代を昭和22~24年生まれ、団塊ジュニアを昭和46~49年生まれ、 とした場合、

昭和32~43年、昭和56~平成4年くらいが犯罪数が多くなるはずですが、グラフをみると、やはりその時期は人口比でみても多いです。

だいたい一定で推移するが、人口数が多い時期は割合でみても治安が悪化するということです。

 

近年では2003年(平成15年)前後に人口が増えたので、少年犯罪にもその傾向がみられます。

 

要は、人口動態の影響が強いということで、良くも悪くも時代背景がどこまで影響を与えるか分かりません。

 

増加傾向にあるもの

少年犯罪は、個別にみると減っているものもありますが、増えているものもあります。

たとえば、家庭内暴力、校内暴力、イジメなどは増加傾向にあります。

 

 

少年人口は、昭和60年が898万人、平成25年が597万人、検挙率を考慮すると、昭和後期の多い時期と比べてでも1~2%程度の差しかありません。

いじめに起因する事件

 

topisyu.hatenablog.com

 

こちらの記事では、学校統計の認知件数を用いています。

あくまで学校側の認知件数であることに注意が必要な統計情報です。

と付け加えていますが、おそらく全体の主旨からするに、対策体制の変化に伴う認知数の上昇であると言いたいのかなと思いますが、 学校統計は検挙人員などの実態と乖離が少ないので、ストレートに受け止めて良いのではないかと思います。

少なからず、学校統計はイジメの減少傾向を示すデータではありません。

 

7-2-1-4-1図 少年による家庭内暴力 認知件数の推移(就学・就労状況別)

 

家庭内暴力は件数でみても増えています。

無職者よりも就学者の家庭内暴力が多く、低年齢化しています。

 

こういった傾向について、「表に出やすくなっただけ」という解釈もありますが、減った際に「関心が薄れただけ」というのが理由になるかと考えると、説得力に欠けます。

被害者の割合が減っているわけではありませんし、もともと表に出てくる犯罪は少ないです。

子供の数も激減していて、執行猶予などの割合も増えていることなどを踏まえると、想像をもとに過小評価すべきでないと思います。

 

少年犯罪の内訳

少年刑法犯検挙人員の都道府県ランキング - 都道府県格付研究所

こちらをみると、少年犯罪の偏差値は都会で多くなっています。

 

資料43 都道府県別 触法少年(刑法)行為態様(罪種)別補導人員

犯罪別の検挙数では、大阪、東京はとてもに多いです。

三重県が総数32人、東北6県の総数610人、中部6県の総数1200人に対して、

大阪だけで1578人、東京は1427人です。

愛知、兵庫、広島、福岡、埼玉等の多い件でも500~800人なので、群を抜いています。

 

発生割合だけでみると西や南が多いですが、検挙人員数や犯罪数は人口数が関係しますから、人口の多い都会で多いのは当然です。

しかし、もう少し細かく犯罪の内容をみると、地域色のようなものがあります。

 

千葉県の少年犯罪の検挙人員数は168人程度ですが、放火は7人います。

一方、検挙人員数が1427人の東京では、放火は2人しかいません。

また、愛知では強姦4人なのに、犯罪数が多い大阪では0人です。

 

個別の犯罪傾向と治安は必ずしも一致するわけではないのに、全体を通してみると、検挙者数の多い地域では凶悪犯や粗暴犯の総数が多くなります。

大阪府の場合、強姦は0人でも、放火だけで19人もいます。

 

でも、放火が19人もいるのに、強姦0人というのは、ちょっと違和感があります。

この違和感には検挙率が関係しているのではないかと思います。

 

検挙率を考慮する

人口割合との兼ね合いをみるとき、単純な人口比では推移が一致しにくいです。

犯罪者が多いのは若者~生産世代だからです。

 

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都道府県人口から高齢者を除いた人口と、少年犯の検挙人員数と比較してみました。

単位は調整してあるので、視的に比較するためのグラフです。

これをみると少年犯罪者数は概ね人口数に比例していることが分かります。

 

少年凶悪犯は基本的に少なく、殺人は検挙者数の多い東京や福岡でも2人。

26県で0人、43県で2人以下です。

 

でも、埼玉・大分・広島は6人、大阪だと9人です。

人口数などを考慮すると、大阪と埼玉は暗数が多い可能性があります。

 

凶悪犯と粗暴犯の合計検挙人員数でみても、埼玉633人、大阪699人です。

東京614人なので、埼玉の方が凶悪犯・粗暴犯が多いことになります。

 

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上のグラフから一部地域を抜き出し、2012年の検挙率を反映させて、少年犯罪の総数にあたるものを出してみました。

検挙人数をもとにしているので、実際の犯罪数はもっと多いかもしれません。

 

大阪は検挙率が低いため、飛び抜けた結果になりますが、人口と検挙者の起伏に解離が少ないので、警察の怠慢というわけではなく、単に犯罪数が多いのだろうと思います。

 

犯罪の要因

ではなぜ犯罪が多いのか?という疑問が生まれます。

 

うつ病患者数 [ 2008年第一位 北海道 ]|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]

図録▽1人あたり県民所得ランキングと地域間所得格差の推移

 

原因としてよく挙げられるのは「貧困」と「精神病」です。 

でも、うつ病患者数では、大阪は46位です。

 

所得ランキングでも傾向は読み取れませんが、所得平均では格差は分かりません。

 

データえっせい: 都道府県別・年齢層別のジニ係数

こちらでジニ係数を出して下さっていますが、親世代をみても都道府県の犯罪割合と一致しません。

少年犯罪に限っていえば、経済的事情は関係が薄いのかもしれません。

 

人口1千人あたりの生活保護率の都道府県ランキング - 都道府県格付研究所

生活保護受給率でみると、大阪は1位ですが、埼玉は22位です。

こちらでも明確な因果関係が見受けられるとまでは言えません。

 

母子家庭、学力、外国人など、よく聞くワードもさらってみましたが、キレイな因果関係は見られませんでした。

 

在日韓国・朝鮮人 [ 2011年第一位 大阪府 ]|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]

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在日者との比較は必ずどこかで出てくるので、一応比較を出してみました。

起伏の形状は他のワードより近いですが、これで分かるのは、一般的な人口分布にそって在日者も暮らしているということくらいです。

 

どれも少しずつ関係している可能性はあります。

個別にみれば、大阪は経済的な事情を抱える人が多いですし、

平成 23 年社会生活基本調査 生活時間に関する結果

埼玉県は、学習や通勤に費やしている時間が長いので、相互扶助機能が働きにくい状態である可能性もあります。

 

ただ、そういった地域特性を犯罪数と紐付けるには、もう少し丁寧な計算が必要になると思います。

万引きひとつとっても、店舗の間隔が数キロもある地域と、20cmしかない地域では、機会条件が違いますし、通勤や通学によって地域をまたぐこともあります。

有効人口数や表層的な動向だけみても分かりません。

 

再犯について

「少年犯罪が増えたように感じるのは報道が増えたから」

という意見がありますが、少年犯罪の報道だけが増えているわけではありませんよね。

 

記憶に残り易い可能性はありますが、報道のインパクトを強める要因を特定するのは難しいのではないかと思います。

 

少年犯罪に限らず、減った増えたというケースのほとんどは「変わらない」です。

たとえば「高齢者犯罪が増えた」といっても、高齢者が増えたから件数が増えているだけで、割合でみると大差なかったりします。

 

なぜそこに拘るかというと、「減った」と「変わらない」の対策は異なるからです。

 

「減った」場合は、その理由を探り、状態を維持した方が良いですが、

「変わらない」場合は、部分的に摂理として受け止める必要が生まれ、防犯や刑罰のあり方を見直さないといけなくなります。

 

どちらの状態にあるかは、人口動態の転換期を基軸にした長期統計でみないとわかりませんが、ある種の自然現象として受け止められる部分があるとしたら、初犯ではないかと思います。

これまでは常に一定割合は犯罪者になっているので、初犯の人口割合を減らすのは難しいかもしれません。

でも、再犯率を下げたり、重犯罪化を防ぐことは可能だと思います。

 

再犯について考える時、留意点が2つあります。

1つは、再犯に至る原因です。

 

犯罪のない社会を目指すために 社会復帰を促し再犯を防ごう:政府広報オンライン

 

再犯に至る主な原因は、環境を変えられないからです。

 

仮釈放された場合などには、実社会での更生をサポートし再犯を防止するため保護観察(※)が行われますが、この保護観察終了時に無職であった人の再犯率は29.8%で、職があった人の再犯率(7.5%)に比べて約4倍も高くなっています(グラフ2)。

また、家族、知人、雇用主など出所後に帰る先(帰住先)のない人ほど刑務所入所を繰り返す傾向があり(グラフ3)、再犯に至るまでの期間も短くなっています(グラフ4)。

 

再犯者は、出所後に「帰る場所がない」「仕事がない」など、社会における居場所と出番がなく、その結果、経済的に困窮したり、社会的に孤立したりして、再び罪を重ねてしまうという悪循環に陥っている可能性が考えられます。

 

とはいえ、生涯に渡って公的サポートしていくのは非現実的です。

既存業務を担う人材も不足している中で、犯罪者の更生サポートにさける人材はたかが知れています。

 

ただ、習慣病であるなら懲役刑の長期化は有効です。

統計的にみて、最も再犯率を下げるのは、犯罪者を社会から隔離(又は排除)することだからです。

犯罪者を生かすにも税金はかかりますが、金銭的な問題は、収容者を労働力として活かせていないからかもしれません。

 

16歳以下の少年犯の場合は、公的資格の取得を出所・出退の条件に加えるというのは、どうでしょうね。

取得にかかる費用をローン扱いにして、親か本人が返済していくことにすれば、公的負担も小さく済みますし、その後の人生の選択肢が増えます。

 

2つめは、処分が甘いほど再犯率は上がるという点です。

執行猶予など、処分が甘いと再犯者率などが高くなります。

 

日本刑事政策研究会:刑事政策関係刊行物

平成22年における保護観察処分少年,少年院入院者,若年保護観察付執行猶予者及び若年入所受刑者の保護処分歴別構成比を見ると,有保護処分歴者(前に保護処分を受けたことがある者)の割合は,保護観察処分少年で20.0%,少年院入院者で64.0%,若年保護観察付執行猶予者で46.6%,若年入所受刑者で37.8%となっている。

若年保護観察付執行猶予者及び若年入所受刑者では,保護観察付執行猶予者全体(25.2%)及び入所受刑者全体(24.6%)と比較して顕著に高い。

これらの者では,少年時の非行傾向が十分に改善されず,刑事処分に至ったと考えられる。

 

罪名別に見ると,有保護処分歴者の占める比率は,保護観察処分少年では,毒劇法違反(32.3%),道路交通法違反(28.5%),少年院入院者では,道路交通法違反(80.2%),毒劇法違反(79.4%),恐喝(72.5%),暴行(69.2%),窃盗(68.9%),若年保護観察付執行猶予者では,毒劇法違反(77.8%),恐喝(61.8%),道路交通法違反(57.9%),窃盗(50.8%),傷害(50.4%),覚せい剤取締法違反(50.3%),若年受刑者では,暴行(56.3%),恐喝(53.6%),傷害(50.5%)の順で高い。

 

平成13年から22年までの間に保護観察が終了した保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,保護観察期間中に再非行・再犯により新たな保護処分又は刑事処分を受けた者が占める比率(再処分率)を保護観察の終了年ごとに見ると,保護観察処分少年では17.1~19.2%,少年院仮退院者では20.7~25.3%であった。

同期間に保護観察が終了した若年保護観察付執行猶予者及び若年仮釈放者について,同様に再処分率を見ると,若年保護観察付執行猶予者では35.4~43.5%,若年仮釈放者では0.7~1.5%であり,若年保護観察付執行猶予者では,各年とも保護観察付執行猶予者全体に比べて高い水準で推移している。

 

少年犯に対しては、一応、段階的な処置が用意されています。

でも、補導が更生機会として機能していないことは以前から指摘されていることで、少年院での治療も効果があるとはいえない状況です。

 

凶悪犯罪に関しては、上限を厳罰化しても犯罪抑止効果は薄いです。

死刑と終身刑で犯罪率が変わるわけではありません。

でも、飲酒運転の罰則強化がそうであるように、軽犯罪への罰則強化には一定の効果を期待できます。

犯罪は、捕まらないケースによって助長されるからです。

 

往々にして、故意性の犯罪はエスカレートしていきます。

特に少年犯罪はその傾向が顕著で、動物虐待だけでなく、前科のある若年犯罪者の大半が性犯罪歴を持っています。

重犯罪に至るまで犯罪を繰り返しているということは、現在の更生機会が役に立っていないということです。

 

重犯罪に至れば少年犯も苦しむので、甘い対処は誰のためにもなりません。

そこに至る前に適切な更生機会を用意した方が良いと思います。

減刑するのではなく、丁寧な段階的処置を少年法の特性としていく方が良いのではないかということです。

 

可塑性があるかどうかは、適切な更生機会を用意できるかにかかっていると思いますが、今のところ「更生」というのは言葉でいうほど簡単ではありませんし、低年齢化の傾向は別の問題として気にとめておいた方が良いのではないかと思います。

 

日本の少年犯罪割合は、他国と比較して高いわけではないので、今ある全てを否定する必要はありませんが、年少少年は社会との関わりが広くないので、本来は、事故の遭遇確率は高くても、事件を起こす確率は年長少年ほど高くありません。

 

受動的であるはずの層が、能動的に犯罪に至っているとしたら、外的要因が強まっている可能性があると思います。

この場合の外的要因とは、社会や大人ということになると思います。