4時間労働制
正規と非正規の分類を「労働時間」で区切ってはどうかという案です。
●正規社員
同一の企業・職場で24時間以内に4時間以上の労働が必要になる場合は、正規社員として雇用します。
※フルタイム(7.5~8h)労働を必要とする仕事では、すべての労働者が正社員。
4時間労働をワンセットとして、副業を可能にする。
※複数の企業で働くことも、4時間のみの労働も可能。
正社員はフルタイムで働く人のこと、派遣社員とは4時間労働制で働く人のこと、と区切るということです。
それ以外の短時間労働はバイト・パート、フルタイム以上の場合は裁量労働制など、従来の雇用制度を利用できると思います。
今は派遣制度があるので、契約社員という枠はなくしても良い気がしますが、残すなら研修期間など適応範囲を限定すべきではないかと思います。
4時間程度であれば、バイト・パート等と扱いを一緒にしても良いのですが、今のところ保険関係の扱いが異なります。
以前から社会保障の一本化が検討されていて、H28から「短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大」が始まる予定です。
当初はH27から順次任意加入という感じだった気がしますが、労働者側からの反発もあって調整をしていました。
その結果、なぜか強制加入になってしまうようですが、H28から3年間の調整猶予があるので、最終的にどうなるのか未だ分かりません。
現在は常時使用関係にある派遣社員と短時間労働者(バイト・パート等)は実態が異なるので、区切った方が良いと思います。
4時間労働制をススメる理由は以下です。
正規社員と非正規社員(派遣社員)の違い
派遣社員は実務に対するランサー、正社員は会社の運営メンバー(会社員)です。
実務では同じ作業をしていたとしても、トータルでは微妙に担当範囲が異なります。
たとえば、最近はコンプライアンスの関係で、「正社員や契約社員なら休日出社できるけど、派遣社員だけではできない」といった区分を設けている会社もあります。
よく「労働時間を半分にしても、正社員と非正規社員の立場が同じになるわけじゃない」と言われますが、だとしたら逆もしかりであるはずです。
派遣社員は交代制でも成立するので、雇用者側の都合でフルタイムになっているということです。
長時間労働が必要なら正社員として雇えば良いので、この曖昧さは是正されるべきだと思います。
「同一労働同一賃金」は難しい
「同一労働同一賃金」は、基準を作るのが難しい上、給与水準を保障する制度ではありません。
正規と非正規の差を役職手当で埋める場合、おそらく現状に近い差が生まれます。
差をつくらないように、手当も統一化するとしたら、賃金水準の高い正規の契約条件を下げるか、非正規を優先雇用するようになります。
この制度に対して、一般的にどんな期待が向けられているのか分かりませんが、おそらく全体的に労働条件が悪くなります。
正社員はフルタイム、派遣は4時間労働、とする方が明確で損も少ないです。
労働時間の違いによって、対応できる業務は自然と振り分けられていくはずです。
派遣制度を活かすには
労働者派遣制度を導入する際、長時間労働問題は解決しておくべきでした。
雇用者は解雇しやすい派遣社員を優先的に雇うので、労働者にも転職しやすい仕組みを用意しておかないと、力バランスが崩れて、派遣制度はうまく機能しません。
雇用の流動性を担保することは派遣制度を導入するにあたっての必須条件ですが、その条件を満たずに運用してしまっているため、起こるべくして問題が起こっているわけです。
4時間労働制によって2~3交代制になれば、雇用に流動性が生まれます。
辞めやすく、解雇しやすくなる一方で、雇いやすく、就職もしやすくなります。
フルタイムでは働けない人でも働きやすくなるため、労働者が増えて社会保障費の削減にもつながります。
重労働の助け
最も効果を期待するのは、保育士や介護士といった、心身共に重労働である「人をお世話する仕事」の負担軽減です。
保育士や介護士は賃金水準の改善が求められていますが、具体的な月給額について触れる意見は少ないです。
何ができるかは財源によりけりなので、具体的な月給額は重要です。
何人かの友人に「月給いくらなら介護士や保育士になる?」と聞いてみたところ、
「30万円~」「50万円なら」「100万円もらっても・・・」と答えは色々でした。
これは狭い範囲の意見ですから、「自分が幾らなら働くか」全国平均をとれば違う結果になるのかもしれませんが、とりあえずこれを参考にして考えると、額面35万円が最低ラインになるかなと思います。
現在の倍額になれば働きやすくなるということでしょうが、高額になるほど
「短期間だけやって、稼いだら辞める」
という感じになるようで、給与アップが本当に良質な人員確保に繋がっていくのか疑問です。
人員不足と一言にいっても、「給与が低いから選択できない仕事」と「給与が高いならやってもいい仕事」は、性質が異なります。
後者は、他の仕事よりも高待遇でないと人員を確保できません。
そして、それが福祉であるなら、それなりの対価を払うには増税が必要になります。
でも福祉は個人負担を軽減するためのものですから、個人負担をあげれば必ず悪循環します。
堂々巡りのように感じますが、これが難しい問題のように感じられるのは、賃金の方に目を向けるからかもしれません。
これまで、労働負担は「お金」で処理されてきました。
たとえば、残業を禁止するのではなく、残業代を払うという方法が選択されてきたわけです。
お金で解決するならまだ良い方で、「賃金をあげろ」という声が日ましに高まってきている理由も分かります。
ただ、本当に労働負担はお金で解決できるのでしょうか。
教師や小児科のように、待遇面は悪くない職業でも志願率は下がってきています。
モンペのせいにするのは簡単ですが、第一次産業や過疎地域でも似たような現象は起こっているので、複合的な理由による結果なのではないかと思います。
どんな職業を選択するかは、どんな人生を送りたいかという選択でもあるので、より条件の良い方へ流れるのは仕方ありません。
また、お金持ちになりたいという願望の中には、「重労働負担を軽減したい」という願望も少なからず含まれている気がします。
賃金水準の改善も必要ですが、労働意欲と賃金水準は必ずしも比例しないのではないかとも思います。
「お金」から「時間」へ、「お金」から「労力」へ、価値観を変える時期がきているのではないかと感じています。
時間は人生であり、人生はお金のように無限ではありません。
本来、時間はお金よりも遥かに貴重であるはずです。
でも、現実社会では労働時間の長い人の方が低給であることが多いです。
資本主義は、時間という個人資本を軽視する理由にはならないので、問題があるとすれば特定の資本に価値が偏っていることではないかと思います。
保育や介護はなくてはならない仕事ですが、ひとりが長時間携わるには負担の重い仕事です。
そういった負担はお金だけでは解決しにくいです。
たとえ高給であっても、休まなければ過労死してしまいます。
安全であればロボットや機械化で補うのも良いと思いますが、まだできません。
4時間労働制にすることで、保育士や介護士ひとり当りの労働負担は半分になります。
午前中は介護士として働き、午後はイラストレーターとして働くなんてこともできるようになるわけです。
フルタイムでは難しくても、4時間ならできることはあるのではないかと思います。
正社員になりたいけどなれない場合
フルタイム正社員として雇ってもらえない場合でも、4時間労働制なら複数の仕事を掛け持つことで月収を保てます。
複数の職場を移動するのは面倒かもしれませんが、サビ残でブラック企業に縛られる方がマシとも言い切れないのではないかと思います。
雇用に流動性が生まれれば、ブラック企業も淘汰されやすくなります。
いまブラック企業であっても倒産しないでいられるのは、労働者の転職が簡単ではないからです。
そして、長時間労働は転職をしにくくさせている原因のひとつです。
残業続きでは就活しにくいですし、自己都合退社だと失業保険は三カ月先まで貰えないので、離職後から転職活動を始めるなら貯金がないと不安です。
失業保険をもらったとしても、元の給与に対して最大6割までしか保障されないので、薄給だと転職までの期間を食いつなげません。
ブラック企業に勤めている人ほど辞めにくい仕組みになっています。
4時間労働制で副業・兼業をしていれば、一方を辞めても最低限の生活費は確保できますし、起業をしたり店舗経営をしながら半日だけ派遣社員として働くとか、半日分だけネットで稼ぐとか、倒産や解雇リスクを考えて兼業化しておくといった柔軟な働き方もできるようになります。
派遣労働をベースに副業・兼業を行う場合、正社員のような安定は得られ難いですが、セーフティネットとしては働きますし、固定メンバーでないというのも、出会いのチャンスが広がる・逃げ場が増えると捉えると必ずしもマイナスではないと思います。
何より就業チャンスが増えるので、何らかの事情で一旦社会から離れてしまった人でも、社会復帰しやすくなるのではないかと思います。
女性間での格差問題
女性の就業率はM字カーブだと言われますが、正社員は変動が小さく、ほとんどが非正規社員の推移です。
子供の年齢別にみる母親の就業状況は、以下です。
●正社員=0歳23.1%→15歳以上22.7%
●非正規=0歳10.3%→15歳以上43.7%、
●仕事なし=0歳60.3%→15歳以上22%、
正規はほぼ変化ありませんが、非正規は出産する時に離職していて、子供が大きくなってから職場復帰する、という流れがあります。
専業主婦等の場合も、子どもが大きくなってから社会復帰しています。
現在の産休・育休・時短制度の利用状況をみても、正規は40%が利用しているのに対し、非正規は4%程度しか利用していません。
時短制度については、制度自体を不要と考える親も30%くらいはいますから、強制取得にはすべきでないと思いますが、正規と非正規に違いがあるのは事実です。
改正案の多くは、もともと待遇の良い正規の権利を強くするものが多いです。
でも、正規の権利が強くなると非正規雇用が増えますし、女性は若い人の方が正規率が高いので、正規として就職した人も人生を職に縛られます。
女性は生涯を通してみれば非正規期間の方が長いので、非正規にとって得な制度でなければ出産・育児の支援制度として不十分です。
ディップ、女性の働き方に対する意識調査を実施 仕事と家庭を両立しながら就業継続を望む女性は約7割 | ディップ株式会社
女性は、未婚者と既婚者でも希望が違います。
未婚女性の7割近くが正社員を望んでいるのに対し、既婚女性だと4割以下、逆に非正規・パートなどを希望する人が過半数を越えます。
全体的に昇進やキャリアアップへの意欲は低く、育休3年化にも70%以上の人が賛成しています。
女性の非正規率の高さは社会問題としてよく話題にあがりますが、既婚女性の多くは昔からパートなどで働いているので、「女性労働者が増えたから男性の賃金が下がった」という結論に直結するかどうか分かりません。
現在の女性派遣社員の多くは、昔でいうこのパート層です。
都心化に伴って就業地が遠くなり、あわせて効率化された長時間労働体制の中で、付随する問題として託児所不足などが起こっているのであって、この層は、バリキャリも世帯主も目指しておらず、あくまでも家計の補足として労働しています。
時短制度は、「4時間労働制」に近い制度になっていますが、法制限が6時間と中途半端であるため、収入は減るのに副業もしにくいです。
時短制度はフルタイムを基準に時間を短縮しているからで、昔のパート層であるとすれば、やはり4時間ワンセットくらいが両立しやすい労働時間ではないかと思います。
4時間労働だと、8時出社→12時退社、13時出社→17時退社といった感じになるので、時短労働制度がなくても色んなライフスタイルを選べるようになります。
給与の差
勤務時間が6時間から4時間になれば給与は減りますが、託児所に預ける時間も短縮できます。
そもそも時短制度は完璧なものではありません。
時間が短縮されても業務量は変わらないとか、手当分が減るので想像以上に減額幅が大きかったとか、稼いだお金の大半が保育料に化けてしまうなど、色々な不満を持っている人がいます。
でも、どう不満を持っても短時間で大金を稼ぐのは難しいので、自由に使える時間を増やして、他の収入を増やしたり、出費を抑えられるようになる方が現実的ではないかと思います。
時給1500円の場合、6時間勤務で月収19.8万円、4時間勤務で月収13.2万円です。
夫400万円・子1人として税金・保険・控除などを考慮すると、6時間勤務の月取得は16万円弱、4時間勤務では11万円弱なので、月換算の差額は5万円です。
こちらの料金を元に、一時預かり本時間+1時間(0歳児)で計算すると、6時間勤務では月12.3万円、4時間勤務では月8.8万円なので、差額3.5万円です。
5万円-3.5万円=1.5万円。
施設によって費用は違いますが、現在の6時間時短から4時間労働制に変えても、月に1.5万円しか差がない場合もあるわけです。
4時間労働制×2社で26万円になりますが、家計の足しくらいであれば、掛け持ちまでしなくても、月に自由に使える時間が44時間増えるので、そこで出費をおさえるなどの調整をする程度でも、ある程度は相殺できるのではないかと思います。
住んでいる地域や託児料など、個別の事情によっても変わる部分はありますが、自由に使える時間が増えて、生活スタイルも整えやすくなって、それでいて1.5万円程度の差額で済むのであれば、私なら時短より4時間労働制を選択します。
4時間労働制による3つの期待
1. 同僚への皺寄せが軽減される
雇用者側には雇用負担があるため、損をしないためには、時短労働者2~4人につき1人補充、という形になります。
6時間労働者の穴埋め(2時間分)としてフルタイム労働者(8時間分)を雇わなければいけないため、すぐに人の補てんができないわけです。
その間の皺寄せは同僚に行きますから、快く思わない人が出てきます。
4時間労働制なら、産後も人員数に変化はありません。
フルタイムから非正規に雇用形態を変える場合、または育児休暇などをとる場合でも、派遣社員の増減は難しくないので、同僚への皺寄せはほぼ無くなります。
雇用者にとっても、出費は変わらず欠員も出なくなるわけですから、4時間労働制の方が得です。
2.託児所不足が緩和する
無資格の保育ママなどを補足人員として雇えるようにしようという政府案ですが、人員確保に努めること自体は良いと思います。
ただ、朝夕に働けるお母さんは2割ほどなので、効果はわかりません。
副業・兼業者も受け入れるとしたら、労働意欲を考慮すると時給1500円以上は必要だと思います。
残業代の方が高いなら、先の職場で残業した方が得だからです。
でも、保育士の賃金水準を考えると、補助役に時給1500円は高いので、ボランティア精神旺盛な人が集まるのを期待するしかありません。
そう考えると、対策としては不完全な気がします。
託児所の増設を求める声もありますが、修繕・解体などのコストも乗ってきます。
0歳児例でいうと、ひとりあたりの費用コストは40万円くらいです。
個人負担2万円ほどで済んでいるのは、38万円を自治体などが負担してくれているからなので、これ以上のコスト増は他の福祉を圧迫しかねません。
4時間労働制になれば、託児所不足は緩和すると思います。
大まかにいえば、午前と午後で子供が入れ替わる形になるため、概念的には今の倍の人数を受け入れることが可能になるからです。
託児所側も1時間あたりに世話をする子供数を維持可能です。
親御さんによっては、政府案に対して「プロの仕事ナメんな!それより賃金アップを」といった反対の声もあるようです。
気持ちは分かりますが、そこまでいってしまうと、少し違和感が生まれます。
基本的に、利用者が見合った費用を払えば保育士の給与はあがりますし、子どもを預ける人が減れば保育士の負担は減ります。
託児施設は、子供のための施設ではなく、働く親を支援する施設ですから、医療や介護よりも福祉としての優先度は下がります。
そのくらいは念頭に踏まえつつ要望を調整した方が良いのではないかと思います。
3.通勤ラッシュの緩和
非正規雇用比率「4割大台乗せ」の正しい見方 | 就職・転職 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
現在、正規と非正規の割合は変わらなくなってきています。
非正規の内、少なくとも30%くらいがフルタイムで働いていますから、非正規だけでも交代制になれば、出退勤の時間がズレて通勤ラッシュが緩和します。
ラッシュが緩和することにより、痴漢やベビーカー問題など、付随する問題もマシになるかもしれません。
補足案
こちらは世帯所得などの考慮が必要になるので、投稿をわけます。