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ノモア

no more, no less

【1-1】高齢出産は本当に危険なのか?

情報リテラシーについて考える機会が増えたので、記事を分けてまとめます。

まずは「高齢出産」の話です。

 

高齢出産は危険なのか?

WHO・FIGOは、初産35歳~を高齢出産と定義しているようです。

高齢出産では染色体異常(ダウン症など)の確率があがると言われていますが、明確な根拠を示した記事は殆どありません。

 

それらを鵜呑みにしても、高齢出産のリスクは1~2%ですから少ないです。

【どんなリスクがあるの?】 - 35歳からの高齢出産

たとえば先天異常では、30代2.02%で40代2.38%、0.36%しか違いがありません。

 

じゃあ「高齢出産のリスク」とは何のことか?となるので、H26人口動態調査などをみてみました。

 

最近は「第二子以降は出産リスクがあがる」と言う人もいますが、それは高齢出産が危険であるという前提をもとにした逆算です。

また、少子化といっても少子出産は増えています。

それらを考慮して、年齢別の比較がしやすい「第一子」の状況をもとに、以下グラフにしました。

 

母親年齢別の第一子出生・死産

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赤い棒グラフが第一子の出生数です。

出生率は2軸を使っているので、30代前半が飛びぬけて多くみえますが、それでも女性人口に対して10%程度です。

 

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その出生数の内、自然死産率は1~3%程度です。

 

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上のグラフでは少なすぎて分からないので、自然死産率だけにしました。

実際の割合が分かるように最大値は100%にしてあります。

 

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自然死産の中から「合併症等」と「染色体異常等」を抜き出しました。

死因は他にもありますが、死産の殆どが合併症等によるものです。(赤い棒グラフ)

 

出生数の多い20~30代で多くなるのは当然ですが、特定母集団における割合よりも、実数の方が社会への影響は大きいです。

 

日本全体の母親年齢別の発症数は分かりませんでしたが、染色体異常がある場合、ダウン症として生まれなければ死産になるので、おそらく緑の棒グラフ部分が一般的な「高齢出産のリスク」について参考にできる部分だと思います。

 

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その自然死産を割合にしました。

赤い線グラフが「染色体異常等」の割合で、40代で上がっています。

これが「高齢出産は危険」といわれる理由だと思いますが、このグラフではそこまでは分かりません。

比較するには分母が違いすぎるからです。

30~34歳の出生数は35万人ですが、45~49歳は1214人しかいません。

(45~49歳の死産数は第一子で8人、第二子も2人、全児あわせても16人)

 

たばこ吸う人の再発リスクは2.5倍に 山形大調査

気になっていたので、こちらの例で説明します。

 

研究によると、がん経験者で非喫煙者104人のうち、新たにがんにかかった人は7人で6.7%だったのに対し、喫煙者は12人中2人で16.7%と約2.5倍に上った。

 

この追跡調査で「2.5倍のリスク」としているのは、癌経験者で新たに癌にかかった人についてですが、喫煙者は2人しかいません。

 

喫煙者の方は1人が8%にあたり、1人だけで非喫煙者の発症率を越えます。

非喫煙者の方は1人が1%なので、どちらも1人しかいない場合でも、喫煙者の方が8倍発症率が高いことになってしまいます。

 

なぜこのような偏りが出るかというと、分母が違いすぎるからです。

こういった印象操作は、マーケティングや視聴率調査などあらゆる場面で見かけますが、最も悪影響が強いのは疫学です。

その中でも世間に誤解を与えやすいのが「たばこ害」です。

 

市民のためのがん治療の会 もっと市民のために シリーズ がん医療の今

たばこ害については別にまとめたいと思いますが、山形大学の追跡調査でも、「癌にかかったことがない」喫煙者の死亡リスクは5.3%、非喫煙者は4.1%と、癌経験者が新たな癌にかかる割合より差が小さくなります。

 

新たな癌にかかった人は喫煙者で2/12人でしたが、癌とは関係ない死亡者だと18/339人であり、分母が28倍以上違うため、正規に近づいて非喫煙者との差が1.2%まで小さくなります。

 

勿論この1.2%も仮の差です。

喫煙者339人に対し、非喫煙者は1661人と4倍以上多いからです。 

喫煙者分母の12人が100倍の1200人になった時に、新たな癌にかかる人も100倍の200人になるかというと、そうはならないということです。

 

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むしろ、癌経験者を母集団とした場合、喫煙者は10%で、90%が非喫煙者ですから、全国の喫煙率を考慮すると非喫煙者の方が癌になりやすいことを示しています。

表の赤い背景部分が結果の悪い方ですが、新たな癌にかかった場合でのみ、(分母が少ないために)喫煙者の方がリスクが高いように思われるだけで、癌自体のなりやすさ等においては非喫煙者の方がリスクが高いです。

 

もし喫煙者のリスクを2.5倍とするなら、「非喫煙者の方が5倍ガンになりやすい」という結果も伝えないと情報として不完全ではないかと思います。

 

出産リスクについても同じで、10代・20代前半で両死因の割合が高くなっていますが、これも分母となる分娩数が少ないためです。

 

むしろ「合併症等」の割合では、高くなるはずの高齢出産で下がります。

これにより、「赤ちゃんではなく母体の負担が重くなるから危険なのでは?」という説も根拠がないことがわかります。

 

総合してみると、高齢出産は他年齢の出産と同等程度のリスクで、10~20代前半の出産は若干リスクが高いかなという感じです。

 

高齢だと妊娠しにくい?

「良い卵子」とされているのは、「着床しやすい卵子」のことです。

年月と共に形状が崩れて着床しにくくなることを老化・劣化というのであって、卵子の遺伝子に問題が生じるわけではありません。

 

形状が崩れる原因は色々で、若い人でも崩れていることはありますから、「老化」という表現がミスリードになっているのではないかと思います。

 

卵子の老化とは?原因、症状、兆候、リスクまとめ。防止するには? - こそだてハック

誤解をもとに、年齢を性質劣化の証左としてしている記事が多いです。

 

www.nhk.or.jp

 

NHKクロ現でも卵子の「老化」を特集していますが、根拠が示されていません。

それに、これを読むと20代で体外受精をする人ってどのくらいいるの?という疑問が湧いてきます。

 

殆どの記事は割合やリスク値しか載せていませんが、各クリニックの個別データをみると、20代でも受精がゼロ・極少数という結果がわりとあります。

先入観がなければ、この時点でおかしいなと感じますよね。

当院の体外受精データ | 高度不妊治療 | 不妊治療 | 神奈川県藤沢市の不妊治療・産婦人科・乳腺外来 【 メディカルパーク湘南 】

 

なぜ受精ゼロになるかというと、20代は0~3人程度しかいないからです。

1人だけの時にその1人が受精すれば受精率は100%になりますし、その1人が受精しなければ0%、10人の時に1人が受精した時は10%になってしまいます。

 

別のクリニックの2010年の高齢女性の不妊治療から採卵件数をみても、やはり20代は少なさそうです。

全採卵数は22629件で、平均年齢39.5歳。

41歳が最多、採卵件数の約50%が40歳以上で、45歳以上が13%。

 

年齢別の特定治療支援事業の助成件数

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H24の助成件数をみても、20代は全体の1割いるかどうかです。

 

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国が引用している虎ノ門病院産婦人科のデータでも、20代が最も妊娠率・死産率が高く、40歳以上の妊娠率・死産率は低いです。

 

先天異常

ダウン症は95%が偶然で、残り5%程度の「転在」で両親どちらか・両方の影響を受けます。

初産婦か経産婦かは関係ありません。

 

先天異常モニタリングシステムからみたダウン症候群の月例/季節別発症頻度について

横浜先天異常モニタリングセンター

こちらのデータを元にした、ダウン症と奇形のグラフが以下です。

 

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40代前半は多くみえますが、0.3%程度です。それも割合でみると高くなるだけです。

 

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年代と年齢区分が異なるので、比較するには参考程度のグラフですが、ダウン症児数よりも奇形児数の方が多く、割合はやはり分娩数の影響を受けます。

 

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各年齢で奇形児が1人生まれた時に、その1人が何%にあたるを出しました。

母親年齢が20歳未満と40歳以上では出生数が少ないため、奇形児を1人生んだだけで、25歳の5~7倍リスクが高いことになってしまいます。

 

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社会への影響については、分娩数を揃えて比較すると分かりやすいかもしれません。

たとえば奇形児出生数を母親年齢30歳で区切ると、以上と以下で分娩数が近くなるので比較しやすくなります。

 

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29歳以下48%、30歳以上52%で、あまり違いがありません。

30歳以上がやや多いのは分娩数が少し多いからで、まったく同じ数だとおそらく50%ずつになります。

 

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ダウン症の場合も、分娩数が近くなるように母親年齢を組みあわせると、やはり割合は半々くらいになります。

分母の少ない年齢は他年齢に吸収されるからですが、殆ど影響はありません。

 

全出産の実数など

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