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ノモア

no more, no less

【1-3】高齢出産は本当に危険なのか?

社会

ala2014.hatenadiary.jp

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【1-2】の続きです。

 

なぜ「高齢出産リスク」が必要とされるのか

話を戻しますが、「高齢出産も他年齢出産もリスクは同程度」というのが結論です。

特別リスクは高くありませんし、万が一何かあっても社会への影響は小さいので、他人が口出しする必要ないと思います。

 

それよりも私が気になるのは、『架空のリスク』が必要とされる理由です。

ここでいう『架空のリスク』は「ノストラダムスの大予言」にも通ずるような架空の社会問題のことで、印象操作のことです。

 

恐怖心を煽るためのリスクデータは、ほとんどが無意味なものであるのに、一部の感情論を助長するためのエビデンスになっていて、事実を隠ぺいするような存在になっています。

かなり巧妙なケースもあって、なぜそこまでして事実から引き離そうとするのか疑問に思うものも少なくありません。

 

裏事情を考える

高齢出産は昔の方が多くて、いま増えているわけではありません。

全体の出生数が減っているので、相対的に高齢出産の割合が高くなっているだけです。

高齢出産数が多少維持されているのは、団塊ジュニア世代の人口数が多いからです。

他年齢の出産は減っているので、現在の出生数を支えているのは30代~の出産です。

 

少子化を危惧する人達からすれば、高齢出産といわれる年齢になっても、出産意欲を持っている女性が多いことは有難い話で、批判する対象ではありませんよね。

じゃあなぜ急にリスクを煽るようになったかのでしょうか。

 

出生数自体は減っているので、産婦人科医会がお客様を弾く意味はないように感じますが、よくよく見ていくと、そうとも言い切れないのかなと思ったりします。

 

出産費用の高騰 

出産費用は安くなっていないので、昔はかからなかった不妊治療費用などが新たに上乗せされるようになりました。

出産に50万円、不妊治療に200万円がかかるとすると、1人当たりの出産費負担は250万円となり、5倍に増えていることになります。

 

出生数が多かった1947年は267万8792人、現在は100万3539人です。

約2.5倍の差があります。

全出産数100万件、35歳城の高齢出産数は27万件、30歳以上なら63万件、不妊治療45万人、体外受精40万人、助成件数は15万件(所得制限あり)なので、全出産の6割が30代以上で、更にその6~7割は特別医療助成を受けていることになります。

 

上の例でいえば全出産の約40%で5倍の出産費用がかかるようになっています。

それにより、出生数が減っていても産婦人科医の所得水準は維持できています。

不妊治療ブーム様々ですね。

 

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「出産育児 時金 一 の 直接払い制度」の運用状況

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昭和35年の出産費用は1万~1.5万円程度でしたが、平成26年は50万円です。

昭和35年の平均初任給は1.3万円なので、物価変動分だけでいえば、出産費用は20万円くらいであるはずですが、その倍以上になっています。

 

体感として25万円前後が適正料金ではないかと思っていたので、10~15倍の20万円前後ならしっくりきますが、33~50倍ほど高くなっています。

 

産婦人科医療に限りませんが、助成金を含め公的資金が投入されています。

特に近年は「少子化対策」という名目で、湯水のごとく助成金が使われています。

公共性の高い事業であるという前提であるなら、個人負担では利用できない料金設定になっているってどうなのでしょうね。

 

産婦人科医は増えているけど…

産婦人科危機再び!?

産婦人科医会は、産婦人科の減少について大変な危機だと言っていますが、人数ではなく施設数です。

 

産婦人科医師の勤務実態と 将来ビジョン

男性の年齢中央値は62歳、女性は47歳、全体平均は46歳です。

若い世代が多いですが、50歳以下では女性が50%いたりします。

生産人口は多くて医師数自体は増えていますし、少子化なので、医者が不足しているということではありません。

 

地域分布に偏りがあることを問題視しているということで、地方では分娩施設が1つもない地域があります。

そのため、多額の助成金を使って誘致しています。

分娩施設が無いから過疎化しているわけでもないと思いますが。

 

直接支払制度の恩恵?

出産費用は妊産婦が全額負担するわけではありません。

出産育児一時金」「出産手当」などがあり、他にも「高額療養費制度」「高額医療費控除」「傷病手当金」「失業給付金」「所得税の還付金」など利用できる制度が沢山あるので、純粋な自己負担額は15万円程度です。

 

子どもが生まれたとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

出産育児一時金」は年々増額されていて、現在は子供1人につき42万円です。

昔は、産後申請で被保険者が受け取っていましたが、平成22年から出産育児一時金直接支払制度」も選択できるようになり、保険組合から病院側へ直接支払いが可能になりました。

被保険者が受け取ることもできますが、ほとんどの人は直接支払制度を利用します。

 

この制度ができた当初は「ゼロ円出産」と言われていましたが(本当はゼロ円ではありませんが)、妊娠85日から直接支払ができるため、出産費用を先に用意する必要がなくなったので、出産しやすくなったとは思います。

 

でも、一番得をするのは医療機関です。

どれだけ費用をあげても、保険組合から支払われるので客離れはありませんし、未払いもないので、自由に料金を設定することができます。

 

みんなハッピーならそれでも良いのですが、健康保険料率は3月に8.90%→9.24%へと引き上げられました。

こういった引き上げがされる時は、必ず高齢者が槍玉にあげられますが、前提となる費用設定によるところも大きいです。

 

産科医療保障制度の掛金負担

お産の「もしも」を支える「産科医療補償制度」:政府広報オンライン

産科医療補償制度」(日本医療機能評価機構)というのも作られました。

分娩事故などにより重度障害が認めらた場合に総額3000万円の損保補償がでます。

病院側の保険なので病院側が加入しますが、1分娩の掛金1.6万円は、「出産育児一時金」に加算されて支給されているため、実質、妊産婦側が負担しています。

(出産費用が出産育児一時金以下の場合、差額は被保険者・妊産婦に支給されます)

 

理屈としては、病院側が出産費用に上乗せしないように一時金から払っている、ということですが、それ以前に出産費用が高騰しています。

平成22年~平成26年の間だけでも、出産費用の平均額は2.3万円高くなっています。

 

出産費用に1.6万円の上乗せをさせないために、最初から妊産婦側に負担させたけど、出産費用は2.3万円高くなっている、という状況です。

 

出産費用は常に「出産育児一時金」から少し足が出る額に設定されています。

40.4万を全額医療機関が収入にできるようにするためですが、その額にあわせるように一時金の額も上がってきています。

しかも一時金は直接支払制度ができて、実質、医療機関が欲しがるだけあげる制度になっています。

 

市場競争を阻害する制度に変えたことが出産ビジネスの暴利に繋がっているように感じるのですが、「少子化対策」という言葉ばかり独り歩きして、そう話題になっていませんよね。

 

なぜ直接支払方式なのか

出産育児一時金」が悪いわけではありません。

被保険者が産後申請を選べないのは、高い出産費用を自分達で用意しておかなければいけないからです。

解決策とまでは言えませんが、直接支払ではなく、全額貸付にしてしまって、後で一時金+自己負担で清算した方がマシです。

手元にあるお金から払うことになれば、妊産婦側も出産費用の適正について意識が向くと思うので、ひと手間あっても貸付で出産を行う方が良いと思います。

 

貸付制度(高額療養費・出産育児一時金) | 都道府県支部 | 全国健康保険協会

「出産費貸付制度」は妊娠85日以上で利用できます。

2~3週間で最大8割33万円(無利子)を振り込んでくれます。

借りたお金は、退院後に「出産育児一時金」で返済します。

 

なぜこの貸付制度の利用率が低いのかというと、8割貸付だからです。

直接支払方式に比べ、5~10万円ほど多く自分を用意しておかなくてはいけません。

「ゼロ円出産」は印象操作するための表現で、実際は自己負担も15万円はあります。

そこにプラス5万円の自己負担が加わると、20万円の用意が必要になります。

 

直接支払制度以外の方法では、妊産婦への負担が少しずつ重くなる制度設計になっていて、直接支払制度を選びやすくなっています。

 

妊産婦からすると、どれだけ高騰していても出産費用は大半を保険でカバーしてもらっているので、小さな損の積み重ねには無頓着になります。

ひと手間かかるなら直接支払制度で良いかなと思ってしまいます。

 

でも、これだけの高騰があると、妊産婦に対する助成金ではなく、ほぼ医療機関への助成金になっています。

東京だと75万円くらいかかることもあり、自然分娩で入院日数が1日長引くだけでプラス1~5万円といった単位で費用が嵩んでいきます。

 

物価変動を元した適正料金が20万円前後、自己負担15万円(貸付なら20万円)とすると、実は被保険者は「出産育児一時金」という制度の恩恵を、全く受けていない可能性もあります。

恩恵を受けているように感じるのは、出産費用の設定を50倍にしたからです。

 

これだと、ただ医療機関に「出産育児一時金」という収入が増えただけです。

制度主旨が変わってしまっているうえ、被保険者は医療機関の暴利について是正を求める機会も奪われていることになります。

 

なぜ帝王切開を優先するのか

高齢出産では帝王切開の割合が高いですが、「高齢出産のリスク」を根拠にリスク回避として行われています。

帝王切開が増える本当の理由 日本の産科医療2020年問題 - 現役産科医の視点

帝王切開大国アメリカの知られざる出産事情 |

帝王切開率が高くなっている、WHO調査を分析|cuta [キュータ]

帝王切開は年々急増していて、問題になっています。

医療機関は、恐怖心を煽るリスク値についてはWHO情報を重視して発信していますが、帝王切開の推奨割合など、自分達に不利になる情報には従っていません。

 

帝王切開は自然分娩の倍ほど入院が必要で、普通分娩が50万円だと、帝王切開は70~100万円くらいかかります。

帝王切開の手術代は22万1600円なので、医療機関は入院日数で稼ぎます。

健康保険がきくので、妊産婦の自己負担は大きくありません。

 

日本の帝王切開は26%で、推奨割合を大幅に超えますが、米35%、中50%と、世界的にも増加傾向にあります。

出生数が減少して病床数は余りますから、有効活用を兼ねて儲かる帝王切開にシフトしているということでしょう。

そして、その帝王切開ブームの根拠に「高齢出産のリスク」があります。

 

儲かっていて何よりですが

・出産100万件/1人+30万円の場合…3000億円

・助成件数15万件/1人+45万円の場合…675億円

・帝王切開26万件/1人+50万円の場合…1300億円

これだけでも、5000億円くらいが医療機関の利益になっています。

 

平成 27 年度は、1,429 億円の経常赤字

国民健康保険財政「赤字」の分析

こういった背景を維持するために保険料率があげられた、と捉えることもできます。

 

平成 26 年度 医療費の動向

平成28年度診療報酬改定の 基本方針(案)に関する参考資料

産婦人科医療のトータルの医業益は見つかりませんでしたが、前年比は出ているのでどこかにはあるんだと思います。

推算だと、医療事業の規模は40兆円(調剤10兆円を含む)、高齢者35.6%14.5兆円、歯医者6万人2.6兆円なので、産婦人科医1万人で利益が歯科の10倍とすると、4兆円くらいではないかと思います。

 

上記の事情を踏まえると、「高齢出産のリスク」は、不妊治療に対する動機付けや帝王切開などを行いやすくするためのものであるように感じます。

 

それぞれの理屈は、被保険者(妊産婦)の利便性や安全性を考慮したものとされていて、上手いのは、被保険者負担は軽減しているようにみえることです。

でも、実際は負担増になっています。

 

公的資金が入っているので問題がないとはいえませんが、百歩譲って自由競争の結果だということもできます。

問題は、信憑性の低いリスクを根拠として煽っていることと、歳出について考える時、前提となる医療費の高騰が度外視されていることです。

そういった前提議論を飛ばして、どの被保険者層が社会負担になっているかというスケープゴート探しは如何なものかと思います。