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晩婚化は何が問題なのだろうか?

【1-1】高齢出産は本当に危険なのか? - ノモア

【1-2】高齢出産は本当に危険なのか? - ノモア

【1-3】高齢出産は本当に危険なのか? - ノモア

「高齢出産は本当に危険なのか?」の続きです。

 

晩婚化って何が問題なんだろうか?

国は「夫婦の完結出生児数」を実質的な生涯出生数として扱っています。

でもこれは、初婚で結婚持続期間15~19年の夫婦についての統計です。

30歳で結婚や再婚をして35歳で出産しても統計には反映されません。

 

20歳で結婚したら40歳までには(離婚などせず)生涯出産を終えているよね、という古い基準の統計で、晩婚や再婚はこの統計には反映されませんから、参考になりません。

 

第14回出生動向基本調査/国立社会保障・人口問題研究所

「結婚持続期間別にみた、平均出生子ども数」では、一応、婚姻期間の浅い夫婦の出生数も分かります。

 

平均出生数は、婚姻期間15~19年の初婚夫婦で、結婚年齢が20~24歳で2.08人、30~34歳で1.50人です。

これを元に「結婚年齢があがるほど、こどもの出生数が少なくなる」としています。

 

でも婚姻期間別でみると2人を超えるのは、婚姻期間20年以上の夫婦だけで、婚姻期間が長いほど出生数が上がっています。

結婚年齢20~24歳といっても、かなり婚姻期間が経っている夫婦が主であるということで、婚姻期間19年だと43歳です。

40代で2人くらい子供がいるという、データをみなくても検討がつくよという程度のことを言っているに過ぎません。

 

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晩婚であるほど完結出生数は少ないとされていますが、第一子は増加、以後が減っています。

子供数分布でいうと、0~2人は増えていて、4人以上が大きく減っているため平均出生数が下がっている感じです。

 

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既婚者の平均出生数は該当人口数に応じて変動している程度であまり変わりません。

先進国では平均出生数は2人くらいに落ち着くので、既婚者へ育児支援をしても多産化しにくいです。

 

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もうひとつ「合計特殊出生率」というのがあります。

A.特定の年、B.特定の世代、の女性15~49歳の年齢別出生率を合計したもので、Bがより正確ですが50歳になるまで分からないのでAで補っています。

 

2.08人を切ると人口減少傾向になると言われていますが、これを越していたのはベビーブーム期くらいで、2000年には既に1.38人、2005年は1.26人でした。

2010年は1.39人で、2010年までの5年間は回復しています。

 

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晩産化は近年始まったかのように語られていますが、1980年代には30代前半が20代前半を抜いていて、2005年あたりから30代前半が20代全体を追い抜いています。

また、現在は10代出産より40代出産の方が多いです。

 

WHOは高齢出産を35歳以上としていますが、1991年以前は30歳でした。

30代の出産が増えたことで高齢出産の年齢を引き上げたので、その頃には既に晩産化していたということです。

 

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http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii10/dl/s05.pdf

 

人口動態データは「初婚同士(+婚姻期間)」の出生数のみですが、再婚の割合が増えているので、再婚もあわせた総婚姻数に対する出生率も出しました。

1993年くらいから、初婚・再婚夫婦の子供数は横ばい(2人)です。

 

【厚労省人口動態】5年ぶり出生数増 自然減は9年連続増で過去最多(1/2ページ) - 産経ニュース

どちらも晩婚化している現代では参考データとして不十分で、本当のところは後10~15年くらいしないと分かりません。

 

少なからず「若い内に産んだ方が良い」という意見は過去のものです。

推移をみるに出産は20代ではなく30代がスタンダードになっています。

ここ35年間の傾向ですから、急に早婚化・若年出産化する方が奇妙です。

 

晩婚化の理由は?

晩婚化の理由について、男性は「未婚男性の貧困化」を原因にあげる人が多いです。

 

非正規雇用対策・若者雇用対策 について

平均給与は、男性正規526.6万円、男性非正規224.5万円。

30代の男性未婚率は、300万円以下91%、500~600万円64.7%。

有配偶率は、35~39歳で、正規71.1%、非正規32.4%。

 

これをみると、さもありなんです。

 

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でも、非正規率が高いのは、女性と男性24歳以下+高齢者で、男性20~59歳は11%。

25~35歳あたりの男性非正規率でも16.4%44万人です。

 

男性非正規は未婚率が高く、その理由として低所得というのはあると思います。

でも平均所得層以上の正規でも、30代では70%程度が未婚です。

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晩婚化については全体傾向であり、男性非正規の低所得化に伴って晩婚化しているかどうかは微妙です。

まず、層としてすごく少ないです。

 

結婚適齢期の非正規男性は1~2割、男性の生涯未婚率は3割ですから、たとえば昔からいた一定の生涯未婚層が、現在の雇用形態でいう非正規男性にあたるとしたら、所得水準が上がってもやはり2~3割は未婚者になってしまう可能性があると思います。

 

男性と女性で大きく違うのは、女性非正規は有配偶率が高いことです。

性労働者はM字カーブで社会復帰するからですが、なぜ女性正規が男性非正規と結婚しないのかといえば、男性正規ほど賃金水準が高くないからです。

 

女性正規の場合、フルタイムで働いている若い時期は男性非正規より所得水準が高いこともありますが、出産して育休・退職・非正規化すると、男性非正規と結婚しても結婚前の自分の所得水準に戻るだけで、結婚にメリットを感じにくいと思います。

 

女性非正規の平均所得は143.3万円なので、たとえ男性が安月給でも結婚した方が世帯所得は上がりますが、実家暮らしだと結婚することで出費が勝る可能性があります。

 

女性の社会参画が進んで、結婚が絶対的なものでなくなった可能性もありますが、それにしてはまだ女性の平均賃金は低いです。

もともと既婚女性はパートで働いていて、フルタイムでも現在の非正規労働はその延長線にあるものと考えられますから、平均月給が男性以上にならないと男女の社会的パワーバランスが変わるほどではないと思います。

 

それに、国が行っている結婚意識調査をみると、女性が結婚に期待する「経済的安定」は1割程度と高くありません。

「女性はお金目当てで結婚する」というのが通説になっていますが、実際は昔からそうでもありません。

経済的安定への期待は年々高まってきてはいますが、それでも15%程度のものです。

 

女性の80%は出産するために結婚を望みます。

それに比べると、15%程度の願望は重要な条件ではないと思います。

お金はあるに越したことありませんが、絶対ではないからこそ共働きしているわけですよね。

 

※男性の大半は生活の安定や癒しを求めて結婚を望みます。

他の項目は両者共どれも少数意見です。

 

では、女性が出産を重視しなくなったのかというと、それもソフトな傾向です。

なぜなら、産まなくなったのではなく、晩産化しているだけだからです。

出産が早婚の理由にならなくなっているとしても、女性の9割はいずれ結婚しますし、結婚すれば出産するという大まかな流れは変わっていません。

統計に反映されていない部分を考慮すれば、変化の小さい部分です。

 

じゃあ根本的な原因は何なのかと考えると、人口数ではないかと思います。

 

昔と今で婚姻に関する顕著な違いは、カップル・夫婦の年齢構成です。

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まだ男女に所得格差があるためか、全体的には男性年上の組み合わせは多いですが、個別の組み合わせでは「同じ歳」の同年代カップルが最多です。

 

1970年は青い折れ線グラフにしてあります。

昔は男性2~4歳上という組み合わせが多かったのですが、同年代が入れ替わりました。

男性3~4歳年上と女性年上の組み合わせも、同数程度にまでなっています。

かなり歳の差がある組み合わせでも、女性年上は増えています。

同じ年代の男性と個別に比較すると、同数程度まで増えています。

 

同年代婚が増えている理由は、団塊ジュニア世代の人口数が多いからだと思います。

周囲に同年代の恋愛対象者がいるので、わざわざ他年代から探す必要ありません。

 

男性の多くは昔から早婚願望が低く、昭和の時代から、結婚適齢期の女性がプッシュして結婚していた流れがあります。

女性は27歳前後、男性は30歳を一区切りにしている人が多いので、女性の方が早く結婚を意識し始めるためです。

 

結婚というと、男性がどのようにプロポーズするかという話になりますが、プロポーズはイベントの装飾に過ぎません。

普通は交際中に結婚や同棲について話をするので、区切りとして行うだけです。

逆を言うと、女性側の結婚願望が低いと恋愛期間が長くなる傾向があります。

 

お見合いについては、成功率は10%程度で、昔から成功率の高い方法ではありませんでした。

 

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同年代で交際する場合、女性が男性の婚期にあわせると、自動的に晩婚化します。

平成26年の平均初婚年齢は夫31.1歳、妻29.4歳、初産の平均年齢は30.6歳です。

だいたいそんなものかなという感じですよね。

 

「晩婚化」の理由は、すごく複雑なようでいて、「人口数の多い年代で同世代婚が増えている」から「双方の結婚願望の自然な高まりにあわせて婚期を決めるようになった」という、すごくシンプルなものかもしれません。

 

じゃあ団塊ジュニア世代以降ではどうかというと、1979年までを広義の団塊ジュニア世代とする場合、まだ37歳なので分かりません。

 

一応、参考用として長期の婚姻動向を出しておきます。

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20~49歳の女性でみると、どの年齢区分でも婚姻率は上がっています。

1950年の20代前半の婚姻率は5%であり、2010年には11%になっていますから、相対的に婚姻率が下がっている20代前半でも、1950年の倍は結婚しています。

どちらかというと、みんな昔よりも結婚するようになっています。

 

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婚姻件数でみると、昭和50年以降は緩やかな減少傾向になっていますが、人口層変動によるものなので(大人が多い社会では既婚者が増えるので婚姻数が下がる)、婚姻動向を探るのに件数は重要でないと思います。

 

国の統計では割合も下がっていますが、これは女性人口対だからです。

たとえば、女性100人が10代10人、20代20人、30代30人、40代40人という分布でいて、各世代10%ずつ婚姻したとすると、国の婚姻率では、10代1%、20代2%、30代3%、40代4%となります。

各世代で同じ婚姻率なのに、「晩婚社会」とされてしまうわけです。

 

統計も何にどう用いるかによるので無意味ではありませんが、晩婚化・晩産化について考察するのに有用な公的資料は多くありません。

 

つまり

晩婚化は悪いことのように語られていますが、今のところ、問題視するような根拠は見当たりません。