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ノモア

no more, no less

2016年の社会保障関連問題を振り返る

社会 炎上

 

business.nikkeibp.co.jp

昨年、長谷川豊さんがブログで「自業自得の人工透析患者(糖尿病などの方)は見捨てろ」というようなことを書いて炎上しました。

 

www.huffingtonpost.jp

この間違いについては、立岩真也さんの話が分かりやすいなと思いました。

でも、社会保障問題は分かり難いので、長谷川さん以外でも誤解している人がいるのではないかなと感じます。

 

[生活扶助]受給者は社会負担とは限らない

www.asahi.com

「相模原障がい者殺傷事件」では「安楽死制度の是非」が議論されましたが、制度議論ではなく「障がい者は社会にとって必要か」という問いでした。

 

社会という漠然としたものに対して「必要な人」がどんな人なのか分かりませんが、「望まれる人」がそれに当るとしたら、ひとりでは生きていけない人が生きているなら、誰かに望まれてそこにいるということだろうと思います。

 

望まれなくても生きる権利があるということなら、障がい者にだけ存在意義を求めるのはアンフェアなので、議論する意味がありません。

社会をどう運用していくかの方が重要です。

 

また、障がい者に限らず、大抵の人は享受するインフラ以上の納税はしません。

保障関連は全体で帳尻を合わせるので、1人も1億人も負担であるのは同じです。

高額納税者も、特権的なインフラや公金を利用できる立場にあるから人よりも稼げていて、その分を多く納税しているに過ぎません。

 

「役に立つかどうかで判断するのは危険」とは限らない

功利主義を危惧する人もいますが、これにも色んな側面があると思います。

たとえば、生活扶助は少額なので、ほとんどは生活費として消費されます。

給付金が月8万円の場合、その8万円は近所のスーパーの売上になっているわけです。

 

低所得者に対する給付は、公共事業よりも社会循環率の良い再配分法の1つです。

公共事業では一定割合が内部留保に回りますが、個人への給付金は使い切りです。

再配分は、個人にいくら配分されるかより、社会の中で淀みや偏りなくお金が広く回り続けていることが重要です。

 

障がい者も高齢者も、社会の中で役割は担っています。

タックスヘイブンへ回っているお金だけでも800兆円と言われていますから、福祉という大義なくして富裕層が大人しく納税するとは思えません。

 

また、Aの給付金を削ってもBへ望み通り予算がスライドするとは限りません。

歳出の35%を国債等で補っていて、社会保障を全部廃止しても25兆円ほど不足しますから、何が足枷であるかなんて行政が好きなように言えてしまいます。

国民が食うに困るような生活を受け入れても問題が解決するとは限りません。

 

人が社会の役に立つかどうかは、社会の仕組みによります。

個々人に居場所がある社会では、その中で役割が生まれます。

もし支出負担の方が重いなら、制度や仕組みの淀みや偏りを改善した方が良いと思います。

 

[医療費]社会保障の悪玉菌

長谷川さんは社会保障支出を問題視していますが、根本的な間違いが2つあります。

 

間違いの1つは財源です。

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平成28年度一般会計予算(平成28年3月29日成立)の概要 : 財務省

国の税収は57.6兆円で、社会保障費は32兆円です。

先ほど書いたように、もし社会保障費が最優先支出であるなら、その部分の税収は足りていて、社会保障費以外の歳出を国債等でカバーしているという解釈もできます。

 

社会保障は枠が大きいので目につきますが、直接国民に対する歳出なので、人口数が多ければ伴って割合を占めるのは当然です。

最低保障額を削ることはできないので、支出を減らしたいなら富裕層か人口数自体を減らすしかありませんが、これは経済活動の助けにもなる再配分枠なので、優先的に削る必要があるとは思えません。

 

ちなみに年金は黒字で、増えた分の2兆3,793億円は積立金に入ります。

社会保障費用統計(平成26年度)|国立社会保障・人口問題研究所

厚生年金・国民年金の平成 27 年度収支決算の概要

平成28年度社会保障関係予算のポイント

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積立金は114兆5,473億円(時価142兆7,078億円) で、こちらも黒字です。

最近、積立運用について危惧されていますが、あくまで増えたところから減ったというだけで、やや回復傾向にもあるようです。

 

2つめは支出が増えている原因です。

これは主に2つの要因によります。

 

1つは、富裕層への社会保障支出の増加です。 

日本の富裕層は122万世帯、純金融資産総額は272兆円 | 野村総合研究所(NRI)

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野村総研のデータをもとに、階層別1世帯あたりの純金融資産(平均額)推移と、2009年を基準に2011年からの世帯数の推移をグラフにしてみました。

 

国内のお金の総量は増えましたが、世帯数が増加しているため、1世帯あたりの純金融資産額の変動は小さいです。

富裕層は2013年にアベノミクスの恩恵を受け純金融資産を増やしましたが、世帯数が5.4万世帯から7.3万世帯に増えたため、2015年の「貯蓄平均額」は減りました。

それでも未だ高水準にあるので、それだけ社会でお金が循環していない(不景気)という意味になります。

2000年と比較すると、富裕層以上の資産は100兆円以上増えましたから、お金持ちの資産を守るために国債で借金を増やしているとも解釈できます。

 

全体的に世帯数は増えていますが、マス層の純金融資産は高齢期に必要とされている貯蓄額を下回るので、いずれ使い切ります。

一方で、富裕層らの金融資産を相続税でマス層ラインまで下げるには数百年かかるので、実質的に富裕層らが貯め込んだお金は経済活動の足枷にしかなりません。

 

老齢年金には給与所得制限がありますが、資産制限や個人所得制限はありません。

高所得者ほど給付額が多く、資産を増やしやすいです。

生活保護は低所得・低資産者に対する人権保障ですが、老齢年金は富裕層優遇なので、富裕層らが増えると社会負担が重くなります。

 

富裕層らは世帯数こそ少ないですが、1世帯当たりの受給額が多いため、数千億円~数兆円の支出になっています。

この層が増えることで、社会保障支出は増えるのに景気も良くならないという悪循環が起こります。

 

もう1つが今回は重要で、医療費支出の内訳です。 

 

医療費は患者が決めているわけではありません。

患者数が2倍になっても、医療費が半額になれば支出は同じです。

ではなぜ医療費支出が増えているかというと、【1-3】高齢出産は本当に危険なのか? - ノモアにも書きましたが、医療費がものすごく高騰しているからです。

 

医療費高騰の理由(1)人件費の高騰

参考資料[PDF]

日本透析医学会ホームページ:図説 わが国の慢性透析医療の現況 −目次−

医療費高騰の原因は、技術進歩と薬剤費の高騰だと言われています。

高齢化の影響は1~5%で、意外と小さいです。

 

healthpolicyhealthecon.com

技術進歩というのは「延命措置」のことです。

こちらのブログは米国の話ですが、人工透析の資料でも、技術進歩は高齢化の倍ほど影響があるとされていますから、日本においても参考にできる部分はあります。

人工透析はこの延命措置に含まれます。

 

でも、予算をみるに技術進歩を原因とするのも少々無理を感じます。

予算的には人件費増の方が謙著だからです。

 

平成 24 年度予算編成に向けての 日本医師会の見解

H27 日本医師会収支予算書

財務省「社会保障②(平成26年度予算編成の課題等)」について

「平成27年度税制改正大綱」における要望実現項目

 

医療予算内訳は、74%が保険料・地方自治体・自己負担分で、国庫負担は26%です。

用途の内訳では、人件費46.4%(20兆円)・医薬品22.6%(10兆円)が大きいです。

 

物価上昇分を超えて医師報酬は上がっていますが、施設・役職別にみると、利益が増えているのは大学病院や国立病院などの公的資金が入っている施設で、役職では病院長の報酬がかなり上がっています。

年齢でいうと、65歳以上の医師報酬です。

 

一方で、医療法人は経営が厳しそうです。

日本医師会は診察報酬をあげろと主張していますが、医療法人への支援ならともかく、公的資金が入っている施設に対しての保障は既に過剰です。

 

医療費高騰の理由(2)医薬品(薬剤費)の高騰

膨張する医療費の要因は高騰する薬剤費にあり

調剤薬局の薬剤費だけでも14年間で3.5兆円増加しています。

人工透析への支出は全体で1.5兆円程度ですから、薬剤の高騰分の半分以下です。

薬剤の中間利益は横ばいなので、高騰した差額分は製薬会社に入っています。

 

日本臨床外科学会

薬剤価格が外国と比べて大変に高く設定されていることを国民の皆さんは御存知でしょうか。実は日本の医療費の約30%は薬剤費に使われているのです。すなわち8兆円が薬に使われているのです。
何で薬剤に使われる医療費がこんなに多いのかと言うと、そもそも厚労省が保険で決めている薬価が大変に高く決められているからなのです。
何故厚生労働省は薬価をこんなに高く設定しているのでしょうか。いろいろともっともらしい説明がなされていますが、日本の製薬業界の最大の組織である東京医薬品工業協会(東薬工)、大阪医薬品協会(大薬協)の理事長などの幹部職が厚生労働省の局長経験者の天下り先となっていることとも無関係ではないかも知れません。

 

後発薬はコストがかかると言われていますが、本当のところは分かりません。

少なからず、これらの問題を患者の責任とするのは無理があると思います。

 

陰謀論を簡単に信じちゃう人は、実務的な想像力があまりない人なのではないか: 不倒城

製薬会社の問題を指摘する意見を陰謀論だと言う人もいますが、陰謀論とする根拠の議事録は報告会程度のものです。

世界で認可されている薬剤や技術を認可していない、内部からも告発がある、製薬会社の利益増が謙著である点など、製薬会社に対する一般的な疑念は多々あり、その全てを陰謀論として否定するには根拠が不足していると思います。

 

医療費高騰の背景

医療費高騰が騒ぎになり難いのは、保険制度の改変とセットで行っているからです。

 

出産の例でいうと、公的保険にあたるのは「出産育児一時金」(1子42~40万円)などです。

昔は出産費用を事前に用意していましたが、今は「出産育児一時金」との差額分のみを払えば良いことになっています。

一見便利な制度ですが、国民にとって得とは言い難いです。

 

現在の出産費用の相場は60~70万円なので、「出産育児一時金」で一部相殺されても、20~30万円を自己負担しなければいけません。

昔はこの自己負担分だけで出産できたので、結局、自己負担額は軽減していません。

物価上昇分がありますが、検査費や帝王切開、各種オプションなど、出産についても個別にかかる費用があります。

 

出産育児一時金」の42万円も保険や税金から払われているので、当然その分の社会負担はあります。

医療費(薬剤費含む)が高騰しているから、医療費支出が膨れ上がっているということです。

 

公的保険と医療費は常にイタチゴッコの関係にあります。

自己負担を軽減するために公的保険を拡充させると、医療機関側がそれに伴って医療費をあげてしまうため、患者側の自己負担額は軽減されないばかりか、医師を養うための社会負担が重くなっていきます。

 

出産に関する技術進歩は緩やかで、特に日本は後進国です。

日本の出産費用は医療機関の収入を守るために高騰しているだけです。

  

問題は、こういった医療機関や医師の特権が質の向上に繋がっていないことです。

一般企業の淘汰は市場競争に委ねられているので、ブラック企業なども野放しになっていますが、医療や国家資格は保護によって質を守ろうとしています。

でも結果として質は向上していませんし、病院長の収入をあげるのは無意味です。

 

むしろ質の悪い医師を弾き、医師不足は医療特権を緩和することで補っていく方が良いのかもしれません。

 

「医師が委縮して治療を行えなくなる」という擁護論もありますが、他の職業にも重大なミスが発生するリスクはあります。

タクシー運転手だって、保育士だって、一生に一度も大きなミスなく務めるのが当然とされているなか、医師だけが「過誤があっても仕方がない」という前提で守られているのは如何なものかと思います。

 

医療機関は、今でも特定疾患の治療を行わないという選択ができます。

そうしないのは保険治療の方が安定した収入になるからです。

医師が何か不満を持っているなら、病院の経営者と交渉すべきで、制度利用しているだけの患者を責めるのはお門違いです。

 

自己負担1~3割ということは、医療機関に9~7割の公金保障が入るということで、ほぼ公的機関です。

公的機関は患者を選んではいけませんから、患者を選びたいなら保険診療をやめるべきですが、それだけでは患者側の負担は軽減しません。

実際、自由診療は増えていますが、それだけでは患者数の減少に伴って医療費が上乗せされるだけなので、国民の利益には繋がりにくいです。

たとえば、自由診療では相場の200倍といった費用を求められるケースもあります。

 

副作用や飲みあわせなどはデータ化できるので、医師は必須ではありません。

現在でも「わからない」「経過次第」としか言えない医師が多いです。

病気を治す過程でドクハラにより心的外傷を負うことも少なくありません。

医師とはその程度の存在で、高い志を持つ人が一握りなのだとしたら、優秀な医師以外に特権を与えるのを止めた方が良いです。

機械化して、オンラインチェックできるようにした方が遥かに労力を省けます。

参考資料[PDF]

日本透析医学会ホームページ:図説 わが国の慢性透析医療の現況 −目次−

 

米国の医療~オバマケアを中心に

9. アメリカ医療の基礎知識 (その1) - 医療制度について

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/020.gif

 

各国の状況からしても公的保険は有用で、問題は仕組みと医療費です。

医療費高騰の解決策は、医師や薬剤の既得権益を撤廃し、需要を下げるしかありませんから、要は機械化と自由化なのだろうと思います。

自由化というのは、薬の個人輸入などを含みます。

健康診断の必要性を訴えるのであれば、「病院に行こう」と圧力をかけるのではなく、高度なセルフチェック・自己治療を可能にしていくことが重要だと思います。

 

これまでは医師免許が必要な行為だったとしても、AI・機械化されていく中、医療行為の全てに医師免許が本当に必要なのか大変疑問です。

 

医療機関や製薬会社の利益を守るための政策?

「健康ゴールド免許」は「きれいな長谷川豊」なのか?(中田大悟) - 個人 - Yahoo!ニュース

少し前に、小泉氏を含む自民党の若手議員らによる政策案が出されました。

医療・介護等の福祉関係の改革は水面下ですすめられていますから、国民の目を逸らすための案なのかなという印象でしたが、唸るばかりの内容です。

 

通院中の高齢者は疾患があるので免許の恩恵は小さいです。

健康な人は日頃病院へ行かないので、定期検診分の費用や手間が増えます。

大きな事故や手術の際に役立たないと意味がない免許ですが、高額医療費請求によって月分の負担額には上限があるので、免許が無くても民間保険などでカバーできます。

特典分、検査薬や体制整備のために自己負担率や予算が上がりますから、総合して考えると、国民にとっては大きくマイナスで、医療機関への利益誘導以外には意味をなさない案です。

 

社会保障格差の問題

「生活扶助」と「医療費」の両方に関係する問題に「社会保障格差」があります。

 

知的障がい者の7割は就業所得で暮らしていて、公的援助は補てん程度です。

一方、身体障がい者は就業率が低いので国保の方が多いですが、障害年金国民年金より受給額が高くなることもあります。

 

現在の国民年金の平均受給額は生活保護費の半分程度です。

生活保護は最低限の生活を行うために必要とされる金額であるはずですが、年齢や保険タイプによって保障額が生活保護の設定額を下回るケースがあります。

 

保険と生活扶助との違いだと解釈する人もいるようですが、老齢年金には所得制限があり、収入によって最大で全額停止されます。

社会保障制度の1つだと考えられているからで、生活扶助も含まれています。

そして、そういった生活扶助を富裕層ほど所得制限なしに受給しています。

 

また、会社員は病気休職の際に「傷病手当金」を受給できますが、最長1.6年であり、

障害年金なら無期限で未加入者でも受給できます。

個人事業者は傷病手当金自体ありません。

 

出産育児についても、会社員は「出産手当金(健保)」「育児休業給付金(雇用保険)」等により給与の67~50%が保障されていますが、やはり個人事業者(国保)などは無保障です。

(「出産育児一時金(42~40万円)」はどちらでも支給されます)

 

待機児童問題では、会社員の不満が目立ちますが困窮度は高くありません。

正社員はわりと育休取得ができていますが、派遣社員だと取得率が下がるので、多少事情は異なりますが、一応派遣先にも 男女雇用機会均等法が 適用されます

最も困っているのは、保障が手薄な個人事業者・自営業者等で、在宅勤務は会社員よりも忙しいのに点数が低いです。

 

理由があるものから無いものまで色々ですが、社会保障格差があるのは確かです。

所得制限を設けて保障内容を上方修正した方が良いと思います。

財源というと増税案が出てきますが、自己資産で生きて行ける富裕層への社会保障支出を見直すなど、先に改善すべき部分が沢山あります。