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女性に対する暴力の実態調査

龍谷大学社会学部 津島昌寛教授と法学部 浜井浩一教授が女性に対する暴力被害の実態として「女性の日常生活の安全に関する調査」(2016)の調査結果を発表 | ニュース | 龍谷大学 You, Unlimited

d.hatena.ne.jp

www.anlyznews.com

 

EUの「Survey on women’s well-being and safety in Europe 2012」調査の様式を踏襲して、龍谷大学が「女性の日常生活の安全に関する調査」を行いました。

記事自体は2017年8月のものですが、先週上がっていたので気になりました。

EUの調査結果はFRAEIGEで閲覧できます。

 

龍谷大学の結論は「EUに比べて日本は少ない」であって、「日本では少ない」ではありませんから、とりあえず、<ニュースの社会科学的な裏側>さんの記事タイトル『日本では女性への暴力は少ないと言う調査結果に困惑するフェミニスト』は、誤解を招く表現だと思います。

 

身体的・性的に暴力を受けたことがある女性は17%となっているので、実際の人口数でいうと約1000万人になります。

セクハラやストーカー等を除いた被害者数なので、多い印象を受けます。

セクハラだと44%なので2700万人、年間でも9%560万人です。

 

「被害者である自覚」がどう影響を与えるかについては、分かりません。

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龍谷大学の調査では、

23%の女性が、親戚・友人など自分の周りで、DVの被害にあった女性を知っている。先の自分自身の暴力被害の申告(被害)率にくわえて、EUと比較すると少ないことから、日本における女性に対する暴力の被害がEUよりも少ないことが読み取れよう

となっていますが、周囲の認知から被害実態を知ろうというのは無理があります。

 

グラフに起こしてみましたが、被害者(緑)と周囲の認知(橙)が近い割合になっているので、周囲で認知している人というのは、ほとんどが直接相談を受けた人なのだろうと思います。

SNSやコミュニティで被害を発信すれば、数十人、数千人と一気に広がりますから、被害者は公に助けを求めにくいということかもしれません。

 

相談されなければ気付かないなら、<キリンが逆立ちしたピアス>さんの指摘通り、無自覚な人が多いと周囲も気付きようがないだろうなと思います。

 

「被害意識は過剰になりやすく、周囲の認知の方が状況を正確に判断できる」

と考える人もいるようですが、DVや性暴力は密室で起こることも多いですし、個人差のあるバイアスは集計上の傾向としては表れにくいです。

 

日本の調査結果

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龍谷大学の調査結果をもとに、ざっくりと人口数の半分を女性人口として表にしてみました。

EUは、人口数も人口密度も各国で違うので、日本が独自の方法で集計しても比較できません。

日本とEUを比較するなら、1500人分の票を回収するか、都道府県を8区分等にして1万人規模の調査するかです。

「女性の日常生活の安全に関する調査」 実施のお知らせとご協力のお願い|龍谷大学(りゅうこくだいがく)

でも龍谷大学は、2448人という人数で調査を行っています。

 

公開シンポジウム「人はなぜ暴力を振るうのか、その対策とは」を開催 | ニュース | 龍谷大学 You, Unlimited

KAKEN — 研究課題をさがす | 女性に対する暴力の実態把握と科学的妥当性・信頼性の高い被害者調査の創出 (KAKENHI-PROJECT-15H01922)

調査方法は、「近畿圏在住の18歳以上75歳未満」に対する訪問調査です。

調査期間は、第1期:2016年10月1日(土)~10月23日(日)、第2期:2016年10月29日(土)~11月20日(日)なので、あわせても二カ月間弱の調査です。

 

なぜ2448人を対象に調査したのか、龍谷大学に問い合わせてみました。

回答を要約すると以下です。

EU調査は国家プロジェクトなので潤沢な資金があり、各国の回収票数が1500人分(×28国)になるまで行われた。

龍谷大学の調査では申請予算が大幅に削られた為、EUのように1500人を対象に調査を行うことができず、規模を1000人に縮小した。

EU全体の平均回収率40~42%を参考に、回収票が1000人分になるように、調査対象者を2400~2500人と設定した。

●調査員の稼働人数が34名(34地点)であったので、一期・一地点36人を対象にして調査を行った。

(36人×34地点)×2期=2448人

●実際に回収した票は741票であった。

龍谷大学の調査は、全国調査ではなく近畿圏限定なので地域性を網羅していません。

地点漏れより人数不足の方が結果に影響を与えるので、地点を減らしてでも回収数をEU調査の条件である1500人に合わせた方が良かったと思います。

 

この調査では、調査員ひとりが22日間で36人を訪問調査する形で行われたのだろうと思います。

日数を単純に割れば1日2人程度ですが、主に土日で行ったなら1日4~5人です。

予算の都合から午前中のみなど限定的に調査員を雇ったとすれば、移動を含め1訪問1時間とすると人数的には限界かと思います。

 

ここまで詳しく聞いていませんが、もしこういう事情であったなら、調査協力を求める方法自体に改善すべき点があるのではないかと思います。

私は質問状が送られてくれば返信しますが、分からない部分は、見知らぬ調査員に訪ねてこられるより、ネット手引きやチャット対応の方が助かります。

 

なぜ人数が気になるかというと、もし対象者をEU各国と同じ1500人としていて、同じ人数の被害回答があったとしたら、被害率が17%→27.7%になるからです。

EU平均は33%なので、あまり開きがありません。

 

通常、被害率は人数の増減では変わらないという前提で扱われるので、違和感があるかもしれませんが、内閣府男女共同参画局で毎年行っている調査が別にあります。

配偶関係

男女間における暴力に関する調査 平成30年 報 告 書

対象者5000人、平成30年版は、有効回収数3376人、内女性1807人です。

婚姻経験者(死別・離別含む) で、配偶者から「身体的暴行」「心理的攻撃」「経済的圧迫」「性的強要」のいずれかを1つでも受けたことがある女性は、31.3%

交際相手から同上の被害を受けたことがある女性は、57.4%

人数でいうと、婚姻経験のある女性被害者は1807人中258人、交際経験のある未婚女性は97人、繰り上げているので合わせて354人、1807人の内33%です。

 

国の調査対象は、婚姻経験がある人と交際経験がある人ですが、龍谷大学の調査には、未婚で交際経験がない人も含まれていています。

日本の未婚女性は2割強、更に交際経験が一度もない女性は平均2割弱です。

女性全体の5%くらいなので、国の調査に組み込んでも多くて数人、1~2%変化があるかどうかです。

龍谷大学の調査で出した被害率が低いだけで、国の調査で比較すればEUと日本には差がありません。

 

「国の調査は曖昧な質問が多いから被害率が上がるだけ」

と言う人もいますが、項目の詳細さはEU調査と変わりません。

あえていうなら周囲の認知項目がありませんが、先に書いたように、本人が相談した割合や相談相手などの詳細は出ています。

 

「自分の経験を白とすることで、他者の同じ経験も白と認識してしまう」

そういうこともあると思いますが、暴力の相談で黒を白とするならかなり軽度なケースだと思うので、被害者意識が事実に伴ったものとは限らない気がします。

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国の調査は年齢階級が出ていてるので、被害率と被害者数をそれぞれグラフにしてみました。

被害率でみると若い人ほど高くなっていて、被害率が高いはずの高齢女性の方が少なくなっていますから、これだけ見ると自覚が影響しているように感じます。

でも、婚姻経験者の内20代は29人、60代以上は663人と人数がかなり違うので、一概には言えません。

 

ただ、バイアスを疑うのは、龍谷大学の被害率に違和感があってのことだと思うので、「調査結果が信用できない」で片づけても良い気がします。

 

もし調査対象者数や回答票数によって結果が変わるとしたら、日本の被害率はEUよりも高い可能性があると思います。

国の調査は毎年5000人を対象に行っていますが、EUは4万2000人です。

調査対象者数を増やせば被害率が跳ね上がるかもしれません。

 

でもDV等は、同じ人が何度も被害にあうなど偏りがあるので、被害率は目安にしかならないと思います。

だから調査対象者数で結果が変わるのではないかと気になったわけです。

被害率は被害件数とは違いますし、件数や内容の方が直接的に不安に影響を与えるので、被害率に拘り過ぎるのもどうかなと思います。

 

男女差

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殺人を除くDVでは、圧倒的に加害者は男性が多く、被害者は女性です。
でも、殺人では半々くらいです。

 

「男性被害者の方がDV被害を訴えにくい」

「女性は報復を恐れるので、限界に達して反撃する時は極端な方法を選ぶ」

大抵はこのどちらかの解釈をもとに議論されますが、どちらもあるし、どちらとも違う理由もあるのではないかと思います。

 

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国の調査では、配偶者間におけるDVは、「身体的暴行」「心理的攻撃」「経済的圧迫」「性的強要」の4つの要素で被害を出しています。

このグラフは、割合を人数に直したものですが、「身体的暴力」「心理的攻撃」は男性被害者も多いです。

 

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検挙件数で差ができるのは、男性が加害者になるパターンの方が、程度が重い、または悪化しやすいせいだと思います。

女性からの攻撃は、数は男性より多いが質が軽度であり、男性からの攻撃は、数は女性より少ないが質が重度だということです。

 

警察は家族の問題にあまり入り込まないので、介入するとしたら重度のケースです。

だから検挙件数では性差が出やすいのだろうと思います。

通報頻度は被害頻度によりますが、男性が助けを求めにくいのはあくまで周囲に対してであり、通報への心理的ハードルに対する性差は小さいと思います。

 

なので、検挙件数の意味は見たまま受け止めて良い気がしますが、軽度か重度かというのは結果論です。

女性の方が非力だから軽度なだけで、粗暴さに性差はないのかもしれません。

それを表しているのが、殺人被害の傾向ではないかと思います。

非力な女性が、犯罪性をもつほどのダメージを男性に与えるのは簡単ではありませんが、殺害なら隙をみて行えます。

 

「経済的圧迫」「性的強要」には、男女の賃金格差や性犯罪などの社会問題が反映されていて、女性被害者が多くなります。

「身体的暴力」「心理的攻撃」の被害者には女性も含まれているので、全体で比較すると女性被害者の方が多くなるということかなと思います。

 

ちなみに、受刑者2万467人に対して、女性受刑者は2005人なので、犯罪者の8~9割は男性です。

男性全体の0.003%です。

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